「うちの試合は7回制なのに、防御率の計算で9を掛けるのは変じゃないか?」——草野球で成績をまとめていると、一度は引っかかる疑問です。

結論から言うと、7回制の草野球でも9を掛けて構いません。9回換算の防御率は「プロや高校野球と同じ物差し」なので、数字の感覚がそのまま通じるからです。一方で、7を掛ける流儀にも合理性があります。この記事では、防御率の計算式の意味、9回換算と7回換算の違い、投球回の端数や自責点といったつまずきポイント、そして草野球ならではの注意点を整理します。

防御率の計算式——「9」は1試合あたりへの換算

まず式の確認です。防御率は次で計算します(NPB の公式記録も同じ定義です)。

防御率 = 自責点 × 9 ÷ 投球回

「9」の意味は単純で、1試合(9イニング)を投げ続けたら何点取られるかへの換算です。たとえば年間で21回を投げて自責点7なら、7 × 9 ÷ 21 = 3.00。「この投手に1試合任せると3点前後」という読み方ができます。

つまり9は「試合のイニング数」を表しているので、7回制の試合しかしないなら7を掛ける、という発想も理屈としては正しいわけです。

7回制なら「7を掛ける」のもあり?——2つの換算の違い

実際、7イニング制のソフトボールや女子野球では、9ではなく7を掛けるのが公式です。少年野球でも試合のイニング数に合わせて換算する例があります。7回制の草野球で7を掛けるのは、決して我流ではありません。

ただし、どちらを選ぶかで数字の意味が変わります。

換算 数字の意味 21回・自責点7の例
9回換算 自責点 × 9 ÷ 投球回 プロ・高校と同じ物差しでの失点率 3.00
7回換算 自責点 × 7 ÷ 投球回 自分たちの1試合(7回)あたりの失点数 2.33

同じ成績でも、7回換算は9回換算より約22%小さく出ます。「防御率2点台」という言葉の重みが変わってしまうわけです。

迷うなら9回換算をおすすめします。 理由は2つ。「防御率3点台前半なら十分」といった世間の相場観がそのまま使えること、そして市販の計算ツールやスコアアプリの多くが9回換算を既定にしていることです。逆に、所属リーグが表彰規定などで7回換算を定めているなら、それに従ってください。

一番やってはいけないのは混在です。人によって、あるいはシーズン途中で換算を変えると、チーム内の比較が全部無意味になります。どちらでもいいので、先に決めて統一するのが唯一のルールです。

手計算でつまずく2つのポイント

換算を決めても、手計算にはミスの定番が2つあります。

投球回の端数「1/3」を小数の0.1と混同しない

投球回はアウト3つで1回なので、端数は1/3(約0.333)刻みです。成績表でよく見る「6.1回」は6回1/3、「6.2回」は6回2/3の意味で、十進数の6.1や6.2ではありません。ここを混同すると数字がずれます。

例:19アウト(=6回1/3)で自責点5の場合。

  • 正:5 × 9 ÷ (19 ÷ 3) = 7.11
  • 誤:5 × 9 ÷ 6.1 = 7.38

確実なのは、投球回ではなくアウト数で数えて最後に3で割る方法です。「19アウト=19/3回」とすれば端数の解釈ミスが起きません。

分子は「失点」ではなく「自責点」

防御率の分子は失点ではなく自責点です。失策や捕逸が絡んだ失点は除いて数えます。特に「2アウト後のエラーで本来イニングが終わっていたはずなら、その後の失点はすべて自責点にならない」という規則は、知らないと大きくずれるポイントです。判定の詳しい手順は自責点の判定ルールにまとめています。

エラーの多い草野球では失点と自責点の差が大きくなりがちで、うっかり失点で計算すると、投手の防御率は実力よりかなり悪く出ます。エースのモチベーションに関わるところなので、ここは丁寧に付けたい項目です。

草野球ならではの注意——イニングが少ないと防御率は暴れる

プロの規定投球回は年間143回ですが、草野球の投手は年間30回前後ということも珍しくありません。サンプルが少ないと、1試合の大炎上で年間防御率が壊れます

例:30回・自責点10(防御率3.00)の投手が、1試合だけ2回で自責点8の炎上をすると、18 × 9 ÷ 32 = 5.06。1試合で2点以上悪化します。

対策は2つです。

  • 規定投球回をチームで決める。プロは「チーム試合数 × 1.0」が規定です。草野球でも「試合数 × 1回」を目安に、届かない投手は参考記録扱いにすると、1〜2登板だけの数字に振り回されません。
  • WHIP を併記する。WHIP((被安打 + 与四球) ÷ 投球回)は換算係数の議論がそもそも不要で、自責点の判定も要りません。「走者をどれだけ出したか」の指標なので、エラーの多い草野球では防御率より投手の実力を素直に映すことも多い指標です。

なお、ここまでの計算を毎回手でやるのは正直手間です。記録から自動で集計したいなら、打席結果と投手成績を付けるだけで防御率や WHIP まで自動計算される ScoreQ のようなスコアアプリを使う手もあります(ScoreQ は9回換算です)。

まとめ

  • 防御率は自責点 × 9 ÷ 投球回。9は「1試合(9回)あたり」への換算
  • 7回制の草野球なら7を掛ける流儀もあり(ソフトボールは7掛けが公式)。ただし数字は約22%小さく出る
  • 迷うなら9回換算。世間の相場観とツールの既定に合う。何よりチーム内で混在させない
  • 手計算の罠は「投球回の端数1/3」と「失点と自責点の取り違え」。アウト数で数えて3で割るのが確実
  • 草野球はイニングが少なく防御率が暴れる。規定投球回を決め、WHIP を併記すると数字が安定して読める

換算をどちらにするかより、基準を決めて続けることの方がずっと大事です。次の試合から、まず自責点とアウト数だけ正確に残すところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 防御率が「∞」や「-」と表示されるのはなぜですか? アウトを1つも取れないまま自責点が付くと、投球回が0のため割り算ができず、慣例的に「∞」(または「-」)と表示されます。次の登板でアウトを取れば投球回が付き、通常どおり計算されるようになります。

Q. コールドや時間切れで試合が途中で終わった場合、投球回はどう数えますか? 実際に取ったアウト数で数えるだけで、特別な補正はしません。5回コールドなら5回ぶんのアウト数がそのまま投球回になります。試合が何回で終わったかは、防御率の換算係数(9か7か)とは無関係です。

Q. 継投したとき、前の投手が残した走者が還ったら自責点はどちらに付きますか? 走者を出した前の投手に付きます。救援投手にとっては「失点だが自責点ではない」記録になります。継投が絡む自責点の整理は自責点の判定ルールを参照してください。